精油の芳香成分は、炭素骨格の特徴から、主にテルペン化合物、芳香族化合物、脂肪族化合物の三つに分けて理解できます。この分類で見るのは、成分にどの官能基があるかではなく、炭素原子がどのような骨格をつくっているかです。
三つの違いを先に比べてから、テルペン化合物をイソプレン単位の数で整理します。
3つの骨格を比べる
| 分類 | 骨格を見るポイント | 代表的な見方・例 |
|---|---|---|
| テルペン化合物 | イソプレンを基本単位とする | モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン |
| 芳香族化合物 | ベンゼン環をもつ | フェニルエチルアルコール、フェノール |
| 脂肪族化合物 | 炭素原子が鎖状に連なる | アルカン、アルケン、アルキン、脂肪酸 |
骨格による分類と官能基による分類は重ね合わせて使います。たとえば、リナロールはテルペン骨格をもつアルコール、フェニルエチルアルコールは芳香族骨格をもつアルコールです。どちらもアルコール類ですが、骨格は異なります。
テルペン化合物――イソプレンを基本単位とする
テルペン化合物は、イソプレンが複数結びついた骨格をもつ化合物です。その骨格に官能基が結合したものも含めて捉えます。精油成分の多くがこのまとまりに入り、イソプレン単位の数によって分類されます。
| 分類 | イソプレン単位 | 主な分子式 | 大きさ・揮発性の傾向 | 代表例 |
|---|---|---|---|---|
| イソプレン(ヘミテルペン) | 1 | C₅H₈ | テルペン骨格の基本単位 | イソプレン |
| モノテルペン | 2 | C₁₀H₁₆ | 比較的小さく、揮発性が高い | リモネン、リナロール |
| セスキテルペン | 3 | C₁₅H₂₄ | モノテルペンより大きく、揮発性が低い | セドロール、β-カリオフィレン |
| ジテルペン | 4 | C₂₀H₃₂ | さらに大きく、沸点が高い | スクラレオール |
表の分子式は、各分類の基本的な炭化水素骨格を表す「主な分子式」です。官能基が加わった成分では、酸素などが含まれ、分子式も変わります。たとえばリナロールはモノテルペン骨格をもつアルコールなので、単純なモノテルペン炭化水素とは分子式が異なります。
モノテルペン
モノテルペンはイソプレン単位2つからなり、比較的分子が小さく、揮発性が高い傾向があります。香りが早く立ち上がる成分を理解する手掛かりになります。代表例のリモネンは、かんきつ類の果皮などに含まれます。リナロールもモノテルペン骨格をもち、ラベンダーなどに含まれる成分です。
セスキテルペン
セスキテルペンはイソプレン単位3つからなり、モノテルペンより分子が大きく、揮発性が低い傾向があります。代表例には、シダーウッドに含まれるセドロールや、イランイランに含まれるβ-カリオフィレンがあります。
ジテルペン
ジテルペンはイソプレン単位4つからなり、セスキテルペンよりさらに分子が大きい化合物です。沸点が高いため水蒸気蒸留法では抽出しにくく、香りは弱い一方で持続性が高いと説明されます。代表例のスクラレオールは、クラリセージに含まれます。
芳香族化合物――ベンゼン環をもつ
芳香族化合物は環状化合物の一種で、6個の炭素原子が正六角形に結びついたベンゼン環をもちます。ベンゼン環では、単結合と二重結合が交互に並ぶ形で表されます。
ベンゼン環をもつ骨格は、精油の香気成分の特徴に関わります。代表例には、芳香族アルコールであるフェニルエチルアルコールや、フェノール類の基本となるフェノールがあります。「芳香族」という名称だけを香りの強さの分類と考えず、ベンゼン環をもつ構造上の分類として捉えます。
脂肪族化合物――炭素が鎖状に連なる
脂肪族化合物は、炭素原子が鎖状に連なる化合物です。ただし、同じ鎖状化合物でも、イソプレンを基本単位とするものはテルペン化合物として区別します。
脂肪族炭化水素は、炭素間の結合によって次のように分かれます。
- アルカン:炭素間の結合がすべて単結合
- アルケン:二重結合をもつ
- アルキン:三重結合をもつ
オレイン酸やリノール酸も脂肪族化合物の例です。植物油は、これらの脂肪酸を構成成分として含みます。精油成分だけでなく、植物油の構造を考えるときにも脂肪族という見方が使われます。
迷いやすい違い
- テルペンと脂肪族:どちらも鎖状構造をとることがありますが、イソプレンを基本単位とするものはテルペン化合物として区別します。
- 芳香族と「香りがある」:芳香族はベンゼン環をもつ構造上の分類です。単に香りをもつ物質すべてを指す言葉ではありません。
- 骨格分類と成分類:テルペン・芳香族・脂肪族は骨格を見る分類です。アルコール類・アルデヒド類・ケトン類などは、主に官能基を見る分類です。
この区別ができると、「モノテルペンアルコール」「芳香族アルデヒド」のような名称を、骨格と官能基の組み合わせとして読めるようになります。