「ストレス」という言葉は、原因となる刺激と、心身に現れる反応をまとめて指すように使われがちです。仕組みを理解するには、ストレス、ストレッサー、ストレス反応を区別し、刺激がどのような反応につながるかを順に捉えることが大切です。
ストレス・ストレッサー・ストレス反応
ストレスは、何らかの刺激や要求によって心身が緊張している状態です。その刺激や要因をストレッサー、ストレッサーによって心理面・身体面・行動面に現れる生体反応をストレス反応といいます。
この言葉は、もともと物理学や工学で、外から力を加えられた物体に生じる「ゆがみ」を表していましたが、カナダの生理学者のハンス・セリエは、この言葉を医学・生理学の分野に1930年代に取り入れました。物体を押す力がストレッサー、押されてへこんだ状態がストレス反応、というイメージが「ストレス」の状態を的確に表しています。
ストレッサーの四つの分類
ストレッサーは、その原因によって四つに分けられます。
| 分類 | 主な例 |
|---|---|
| 物理的要因 | 光、音、湿度、気温、放射線、風、自然環境や自然現象による著しい変化 |
| 化学的要因 | タバコ、食品添加物、栄養の過不足など、体内へ取り込まれる化学物質 |
| 生物学的要因 | 細菌、ウイルス、カビ、ダニ、花粉など、体内へ侵入した非自己 |
| 社会的要因 | 家庭・学校・職場・地域の環境や人間関係、仕事や勉強、人生上の出来事 |
一つのストレッサーで緊張しているときは、ほかの刺激にも敏感になる傾向があります。また、社会的要因には悲しい出来事だけでなく、喜びを伴う大きな変化も含まれます。
心身に現れるストレス反応
ストレス反応は、心理面だけに現れるものではありません。たとえば、動悸やめまい、眠れない、いらだち、食欲の低下、月経周期の乱れなどが挙げられます。どの反応が現れるかには個人差があり、これらの例だけで状態を自己診断することはできません。
適度なストレスは、やりがいを感じるきっかけや、気持ちを切り替える刺激になる場合もあります。一方、不快で対処が難しい状態が長く続けば、心身の変化を伴う「悪いストレス」になります。
ストレス時のホルモン分泌
ストレスを感じると、視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が分泌されます。続いて下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が分泌され、ACTHの働きによって副腎皮質からコルチゾールが分泌されます。
この流れは、次の順序で整理できます。
- ストレスを感じる
- 視床下部からCRHが分泌される
- 下垂体前葉からACTHが分泌される
- 副腎皮質からコルチゾールが分泌される
ストレス反応には、この経路だけでなく、多くのホルモン、神経系、免疫系も関わります。
HPA軸 ⚪参考 HPA軸は、視床下部(Hypothalamus)・下垂体(Pituitary)・副腎(Adrenal)のつながりを表す名称です。上で学んだCRH→ACTH→コルチゾールの流れを、一つの調節系として理解するためにここで取り上げます。
分泌されたコルチゾールは、視床下部と下垂体前葉の働きを調節し、CRHとACTHの分泌を抑える方向に作用します。これを負のフィードバックといいます。コルチゾールが逆向きに分泌されるのではなく、上流からの分泌を抑えて調節する関係です。
(参考文献) NCBI Bookshelf「Physiology, Anterior Pituitary」および「Physiology, Adrenocorticotropic Hormone」
コルチゾールの日内変動や睡眠との関係は「睡眠に関わる物質」、三つの系による恒常性は「ホメオスタシスとは」で詳しく扱います。
反応が長く続くとき
ここまで扱ったのは、ストレッサーと初期の反応、ホルモン分泌です。ストレッサーが持続したときに抵抗力がどう変化するかは、「ストレスへの適応と人体への影響」で汎適応症候群として学びます。