精油の香りを嗅いだときと、植物油で希釈した精油を皮膚へ塗ったときでは、精油の成分が身体に伝わる入り口が異なります。アロマテラピーのメカニズムを学ぶときは、まず「嗅覚器から脳へ伝わる経路」と「皮膚に浸透して伝わる経路」の二つに分けると、全体像をつかみやすくなります。
嗅覚器から脳へ伝わる経路
香りを吸い込むと、におい分子が鼻腔の奥にある嗅上皮へ届きます。においの情報は、嗅細胞で電気信号へ変換され、嗅球で整理されたのち、嗅皮質へ送られます。
嗅皮質へ届いた情報は、さらに脳の各部へ伝わり、香りのイメージ、感情、記憶などと結びついて、においの認識につながります。その詳しい経路は「香りと脳」で扱います。
この経路は、二つの段階に分けて学びます。
- におい分子が受容され、電気信号として嗅皮質へ届くまで
- 嗅皮質から脳の各部へ情報が伝わり、においが認識されるまで
最初の段階をたどると、「鼻で香りを捉え、脳でにおいを判断する」という嗅覚のしくみが見えてきます。
皮膚に浸透して伝わる経路
精油を構成する成分の中には、比較的小さな分子で、油になじみやすい親油性をもつものがあります。こうした性質は皮膚への浸透性に関係しますが、実際の浸透性は成分や塗布条件によって異なります。すべての精油成分が同じ程度に浸透するわけではなく、浸透の程度や到達する深さを一律に決めることはできません。
皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下組織の三層に大きく分けられます。表皮の最も外側にある角質層には、異物の侵入や外的な損傷を防ぎ、水分の蒸発を抑えるバリア機能があります。精油の皮膚への浸透を理解するには、精油成分の性質と、この皮膚の構造を一緒に捉える必要があります。「皮膚の構造と働き―バリア機能と精油成分の浸透」では、皮膚の三層、バリア機能、真皮の働き、精油成分の浸透を扱います。
二つの経路を区別してつなげる
嗅覚経路では、においの化学情報が神経を伝わる電気信号へ変換されます。皮膚経路では、精油成分の性質と皮膚の構造が浸透に関係します。同じ精油を扱っていても、身体への入り口と、その後の伝わり方は同じではありません。
まず「香りを感じるしくみ」で嗅皮質までの流れをたどり、次に「香りと脳」で嗅皮質から先の働きを学びます。さらに、香りの感じ方が人や状態によって異なる理由は、発展記事「においの感じ方はなぜ違う?」で深められます。皮膚から伝わる経路は、「皮膚の構造と働き―バリア機能と精油成分の浸透」で確かめます。この順で読むと、二つの経路を混同せずに理解できます。