学習目標:近代医学の発展と、その中でメディカルハーブがどのような位置づけとなり、現在の統合医療へつながっているかを理解する。
植物療法から近代医学へ
植物療法が医学の中心だった時代は、19世紀初頭まで続いたとされています。その後、植物から特定の成分を分離する動きが進み、1827年頃にはメドースイートからサリシンが、1860年頃にはコカの葉からコカインが分離されました。1899年頃には、サリシンからアスピリン(アセチルサリチル酸)が化学的に合成されます。
成分の分離と合成は薬の世界を変えていきました。コカインは当時の画期的な麻酔薬とされ、麻酔薬の利用は外科医療の発達にも大きく貢献しました。
19世紀後半には、コレラ菌の発見やツベルクリンの発明で知られるコッホ、狂犬病ワクチンを発明したとされるパスツールなどの細菌学者が登場します。特定の病気には特定の病原菌が関係するという特定病因論が定着し、20世紀にはペニシリンなどの抗生物質が作られました。病原菌を狙う医薬品は「魔法の弾丸」と呼ばれ、医学の中心は医薬品を用いる近代医学へ移っていきます。
その一方で、伝統医学は次第に顧みられなくなりました。イギリス統治下のインドではアーユルヴェーダの学校が、中国では中医学の学校が閉鎖され、日本でも1882年から1883年にかけて医師免許法が施行され、漢方医がその対象から外されたとされています。
統合医療とメディカルハーブ
20世紀には近代医学が世界の医療の主流となりました。しかし、合成医薬品や手術に頼る医療も万能ではないという意識が生まれます。その背景には、薬害や副作用など医薬品に関わる問題と、工場排水などによる環境汚染の社会問題化があり、科学だけを重視する姿勢が問い直されるようになりました。
近代医学によって伝染病や感染症が少なくなる一方で、生活習慣病や心身症に悩む人が増えたと捉えられました。そのなかで、治療より予防、部分より全体の調和を重視する分野が再び注目され、植物療法を含む代替療法が見直されるようになります。
統合医療は、近代医学と代替療法の長所を患者の治療へ生かそうとする考え方です。近代医学は緊急治療が必要な症状や外傷などに強みを持つ一方、慢性的な症状やストレスに由来する症状には必ずしも最適ではなく、代替療法にはそれと逆の傾向があると捉えます。両者が長所を生かして短所を補うことで、患者にとって有益な医療を目指します。
統合医療は始まりつつある段階で、将来像はまだ明確ではないとされています。そのなかで、メディカルハーブは統合医療の一端を担う可能性があるものとして期待されています。