水蒸気蒸留法は、精油の抽出によく用いられる方法です。植物に蒸気を当てたり、煮出したりして香り成分を揮発させ、冷却して再び液体に戻すことで、精油を水から分けて取り出します。
この方法では精油だけでなく、香り成分を微量に含む芳香蒸留水も得られます。一方、植物が熱にさらされるため、どの植物にも同じように適するわけではありません。
蒸気・冷却・分離の順に取り出す
基本の工程は、次のように進みます。
- 原料となる植物を蒸留釜に入れる
- 蒸気を直接吹き込むか、水を沸騰させて植物に蒸気を当てる、または植物を直接煮出す
- 蒸気の熱で植物に含まれる香り成分を揮発させる
- 香り成分を含む蒸気を冷却器へ送る
- 冷却して再び液体に戻す
- 水と精油の2層に分離する
流れを短く表すと、次のようになります。
植物に蒸気を当てる/煮出す
→ 香り成分が揮発する
→ 香り成分を含む蒸気を冷却する
→ 水と精油に分かれる
分離した精油は、液体の上層部または下層部に集まります。精油が常に上になるわけではなく、水との関係によって下層になる場合もあります。
精油と芳香蒸留水が得られる
蒸留後の液体は、精油と水に分かれます。ただし、香り成分のすべてが精油の層へ移るわけではありません。残った水にも香り成分が微量に含まれています。
この水を芳香蒸留水といい、フラワーウォーター、ハーブウォーターとも呼びます。芳香蒸留水は化粧水などに利用されています。
したがって、水蒸気蒸留法では、一度の蒸留から次の2つが得られます。
- 精油
- 芳香蒸留水
熱に弱い植物には向かない場合がある
水蒸気蒸留法では、植物が蒸気の熱にさらされます。そのため、香りや成分が損なわれる場合があります。
熱の影響を受けやすい植物など、水蒸気蒸留法が不向きな植物には別の抽出法を用います。植物や抽出部位に合う方法を選ぶことが、得られる香りや成分を左右します。
3つの水蒸気蒸留法 🟣専門
水蒸気蒸留法には、植物と蒸気をどのように接触させるかによって、主に3つの方式があります。これらの方式には、資料や分野によってさまざまな呼称があります。
| 方式 | 植物と蒸気の接触方法 | 用いられることが多い植物部位 |
|---|---|---|
| A | 植物を蒸留釜に入れ、水蒸気を直接当てる | 花や葉など、繊維がやわらかい部位 |
| B | 別の釜で水を沸騰させ、発生した水蒸気を植物に当てる | 花や葉など、繊維がやわらかい部位 |
| C | 植物を水の中に入れて煮る | 木材、根、茎、皮など、繊維がかたい部位 |
AとBは、どちらも植物に水蒸気を当てる方式ですが、蒸気を発生させる位置が異なります。Cでは植物を水の中へ入れ、水とともに加熱します。どの方式でも、香り成分を含む蒸気を冷却し、精油と芳香蒸留水を得る後半の流れは共通しています。
蒸留によって成分構成も変わる 🟣専門
水と精油が2層に分かれるのは、精油が水に溶けにくく、水との比重が異なるためです。一方、水に溶けやすい香り成分の一部は芳香蒸留水へ移ります。
また、水蒸気蒸留法では熱に弱い成分が損なわれたり、水に溶けやすい成分や熱に弱い成分が精油に含まれにくくなったりする場合があります。そのため、抽出後の精油は、原料植物に含まれていた香り成分をそのまますべて移したものではありません。
開発・改良された蒸留法 🟣専門
水蒸気蒸留法は改良が続けられ、減圧や超音波、マイクロ波を利用する方法も登場しています。
- 超音波印加型減圧水蒸気蒸留法:抽出効率の高さが特徴
- マイクロ波減圧水蒸気蒸留法:蒸留時間が短く、消費エネルギーが少ないことが利点
いずれも植物本来に近い成分を抽出でき、新しい香りの精油を作れるようになるといわれています。
精油と芳香蒸留水の量の例 🟣専門
ハーブ類の一般例では、水蒸気蒸留法で得られる精油と芳香蒸留水の量は、次のように示されています。
- 精油:芳香蒸留水 = 1:100
- 芳香蒸留水に含まれる香り成分:約0.1%
- 全香り成分のうち芳香蒸留水へ移る割合:約10%
これらはハーブ類について示された一般的な例であり、すべての植物や蒸留条件で一定になる固定値ではありません。香り成分の一部が芳香蒸留水へ移り、熱などの影響も受けるため、得られた精油の香りは植物そのものとまったく同じではありません。
まとめ
- 水蒸気蒸留法は、植物の香り成分を蒸気で揮発させ、冷却して水と精油に分ける方法です。
- 蒸留によって、精油と芳香蒸留水が得られます。
- 植物が熱にさらされるため、香りや成分が損なわれる場合があります。
- 🟣専門植物と蒸気の接触方法には主に3方式があり、植物部位の性質に応じて使い分けられます。
- 🟣専門香り成分の一部は芳香蒸留水へ移り、減圧などを利用した新しい蒸留法も開発されています。
