アロマテラピー検定公式テキストでは、基本30種の精油について関連する研究例が紹介されています。このページでは、それらの研究を理解しやすいように、研究対象や方法、観察された結果、読み取る際の注意点を整理しました。研究結果は、特定の条件で得られたものであり、精油の一般的な効果や家庭での使用方法を直接示すものではありません。
このほか、インストラクター公式テキストに掲載された追加4種の研究例も、後半にまとめています。基本30種と同じく、研究対象・方法・結果・読み取る際の注意点を整理しています。
研究データの読み方
ヒトを対象にした研究と、培養細胞・微生物・成分を調べた実験では、結果から読み取れることが異なります。また、同じ人の実施前後の変化と、対照群との違いも別の評価です。以下の濃度や時間は研究条件であり、家庭での使用方法を示すものではありません。
出典欄には、原論文の本文・抄録・書誌情報のどこまで確認できたかを併記しています。書誌確認のみの項目は、研究概要を検定資料に基づいて紹介しています。
精油別の目次
基本30種
インストラクター対象4種
イランイラン|香りの吸入と血圧・血管の指標
研究の対象:ヒト
健康な成人11名が、香りのある空気と通常の空気を別の日に30分間ずつ吸入した研究です。イランイラン精油を用いた条件では、対照条件に比べ、収縮期血圧と脈波伝播速度の変化量が低下する方向に有意な差を示しました。
脈波伝播速度は、拍動が血管を伝わる速さです。この研究で観察したのは短時間の反応で、動脈硬化そのものが改善したかを調べたものではありません。
出典:三浦哉,他(2015)一過性の精油環境が動脈スティフネスおよび血管内皮機能に及ぼす影響.アロマテラピー学雑誌15(1):122-126.
確認範囲:抄録確認。
クラリセージ|検査中の血圧と呼吸数
研究の対象:ヒト
尿失禁の検査を受ける女性を対象に、クラリセージ、ラベンダー、対照のアーモンド油を比較しました。解析対象34名のうち、クラリセージ群は12名です。60分間の吸入後、クラリセージ群では対照群より収縮期血圧と呼吸数が有意に低下しました。
検査を受けている状況での結果です。34名全員にクラリセージを使用した実験ではなく、尿失禁の治療効果を評価したものでもありません。
出典:Seol GH, et al. (2013) Randomized controlled trial for Salvia sclarea or Lavandula angustifolia: differential effects on blood pressure in female patients with urinary incontinence undergoing urodynamic examination. J Altern Complement Med 19(7):664-670.
確認範囲:本文の方法・結果確認。
グレープフルーツ|香りの吸入と交感神経活動
研究の対象:ヒト
成人を対象に、複数の香りを吸入したときの自律神経の反応を比較した研究です。グレープフルーツ精油の条件では、無臭の溶媒を吸入する条件より、血圧変動から求めた交感神経活動の指標が有意に高くなりました。
ここで測ったのは自律神経活動の指標です。脂肪の減少や体重の変化を示す結果とは区別して読みましょう。
出典:Haze S, Sakai K, Gozu Y. (2002). Effects of fragrance inhalation on sympathetic activity in normal adults. Jpn J Pharmacol. 90(3):247–253.
確認範囲:抄録確認。
この精油が比較対象などに含まれる研究:黄色ブドウ球菌のバイオフィルム
サイプレス|抽出方法による抗酸化活性の違い
研究の対象:試験管・成分分析
サイプレスを原料に、蒸留と超臨界流体抽出で得られる試料の成分や抗酸化活性を比較した研究です。超臨界流体抽出による試料のほうが、強い抗酸化活性を示したと報告されています。
抽出方法の異なる試料を実験室で比較した結果です。通常の蒸留精油を使った芳香浴や塗布で、同じ作用が得られるとまではいえません。
出典:Nejia H, et al. (2013). Extraction of essential oil from Cupressus sempervirens: comparison of global yields, chemical composition and antioxidant activity obtained by hydrodistillation and supercritical extraction. Nat Prod Res. 27(19):1795–1799.
確認範囲:書誌確認・紹介は検定資料に基づく。
サンダルウッド|メラニン生成に関わる酵素への作用
研究の対象:試験管・酵素
サンダルウッド精油が、メラニン生成に関わる酵素チロシナーゼの働きを抑えるかを調べた研究です。試験管内の測定で酵素活性の阻害が認められ、主要成分のα-サンタロールにも阻害活性が見られました。
キノコ由来の酵素などを使った基礎実験です。ヒトの肌に塗って色素沈着が改善するかを直接検証した研究ではありません。
出典:Misra BB, Dey S (2013) TLC-bioautographic evaluation of in vitro anti-tyrosinase and anti-cholinesterase potentials of sandalwood oil. Nat Prod Commun 8(2):253-256.
確認範囲:本文の方法・結果確認。
ジャーマンカモミール|カマズレンの抗酸化活性
研究の対象:試験管・単離成分
ジャーマンカモミール精油に含まれるカマズレンを分離し、抗酸化活性を測定した研究です。総抗酸化能の測定では、α-トコフェロールなどの比較物質を上回る活性を示しました。
精油全体ではなく、分離した成分の結果です。また、別の測定法であるDPPH試験では反応しなかったため、すべての抗酸化試験で一様に強いと読み替えないことが大切です。
出典:Capuzzo A, et al. (2014) Antioxidant and radical scavenging activities of chamazulene. Nat Prod Res 28(24):2321-2323
確認範囲:抄録確認。
ジャスミン(アブソリュート)|香りを嗅いだときの脳の反応
研究の対象:ヒト・書籍掲載報告
ジャスミンの香りを嗅いだときと、香りのないときの脳の反応を比較した報告です。香りのある条件で、脳の活動が高まる方向の反応が観察されたとされています。
出典は鳥居鎮夫の書籍『香りの謎』です。人数や測定方法の詳細、元になった原論文は確認できていないため、学習能力や作業成績の向上まで結びつけずに紹介します。
出典:鳥居鎮夫 (1994). 香り選書1 香りの謎. フレグランスジャーナル社, pp.31–42(掲載ページは検定資料の引用情報)。
確認範囲:書籍の書誌確認・原論文未特定。
ジュニパーベリー|細菌・真菌の増殖への影響
研究の対象:微生物
3種類のジュニパーベリー精油と、その主要成分を微生物に作用させた研究です。カンジダ、アシネトバクター、MRSAなどの増殖を抑えた試料がありました。ただし、良好な抗微生物活性を示したのは3試料中の1試料でした。
同じ精油名でも試料の組成によって結果が異なる点が読みどころです。患者から分離した菌を用いた実験であり、患者に精油を投与した臨床試験ではありません。
出典:Filipowicz N, et al. (2003) Antibacterial and antifungal activity of juniper berry oil and its selected components. Phytother Res 17(3):227-231.
確認範囲:抄録確認。
スイートオレンジ|小学生の計算ミスと気分
研究の対象:ヒト
小学6年生38名を、スイートオレンジとペパーミントを調べる群に分け、それぞれ精製水の条件と比較した研究です。スイートオレンジでは計算の誤答数が減る傾向があり、意欲や不安などの気分評価には有意な改善が見られました。
計算ミスの減少には統計的な有意差がなく、計算の作業数も増えていません。「計算力が向上した」と広げず、気分の変化と計算結果を分けて理解しましょう。
出典:熊谷千津,永山香織(2015)小学生の計算力と気分に与える精油の影響.アロマテラピー学雑誌16(1):7-14.
確認範囲:抄録確認。
スイートマージョラム|夜勤後のアロマトリートメントと睡眠
研究の対象:ヒト
交替制夜勤の看護師50名のデータを用い、スイートマージョラム精油によるトリートメント群27名と、休息群23名を比較しました。トリートメント群では、施術前より睡眠の質問票の総得点や一部の項目が改善しました。
ただし、睡眠質問票の総得点の変化について、両群の差は有意ではありませんでした。別に測定した施術室での主観的な睡眠の質には群間差があり、評価項目によって結果が異なります。精油だけの効果とマッサージの効果も分けられません。
出典:Chang YY, Lin CL, Chang LY. (2017). The Effects of Aromatherapy Massage on Sleep Quality of Nurses on Monthly Rotating Night Shifts. Evid Based Complement Alternat Med. 2017:3861273.
確認範囲:本文の方法・結果確認。
ゼラニウム|心筋梗塞患者の不安の評価
研究の対象:ヒト
急性心筋梗塞の患者80名を、ゼラニウム精油と対照の各40名に分けた研究です。酸素マスク内の吸収パッチから香りを1日20分、2日間吸入した群では、対照群より不安の評価得点が有意に低下しました。
医療環境で不安の変化を評価した結果です。心筋梗塞そのものの改善を示すデータではありません。
出典:Shirzadegan R, et al. (2017) Effects of geranium aroma on anxiety among patients with acute myocardial infarction: a triple blind randomized clinical trial. Complement Ther Clin Pract 29:201-206.
確認範囲:抄録確認。
ティートリー|ティートリー配合ジェルとニキビ
研究の対象:ヒト
軽度から中等度のニキビがある60名を、5%ティートリー精油配合ジェルと対照ジェルの各30名に分け、45日間比較しました。精油配合群では、ニキビの数と重症度の指標が対照群より有意に改善しました。
一定の濃度と剤形を用いた試験です。精油の原液を塗布した結果ではなく、自作ジェルの処方を示すものでもありません。
出典:Enshaieh S, et al. (2007) The efficacy of 5% topical tea tree oil gel in mild to moderate acne vulgaris: a randomized, double-blind placebo-controlled study. Indian J Dermatol Venereol Leprol 73(1):22-25.
確認範囲:抄録確認。
ネロリ|閉経後の症状と血圧
研究の対象:ヒト
閉経後の女性63名を、濃度の異なるネロリ精油2群と対照群に分け、1回5分、1日2回、5日間吸入した研究です。ネロリ群では、更年期に関連する生活の質のうち身体症状の得点が改善し、血圧にも低下が見られました。
改善は評価項目や濃度によって異なります。収縮期血圧の対照群との差は0.5%群で、拡張期血圧の差は両濃度群で認められました。
出典:Choi SY, et al.(2014)Effects of inhalation of essential oil of Citrus aurantium L. var. amara on menopausal symptoms, stress, and estrogen in postmenopausal women: a randomized controlled trial. Evid Based Complement Alternat Med 796518:1-7.
確認範囲:著者所属大学掲載の抄録確認。
パチュリ|精油と由来成分のダニへの作用
研究の対象:ダニ・実験室試験
コナヒョウヒダニに、パチュリ精油や精油由来の成分DHEMHなどを作用させた研究です。接触させる試験や気相での試験から殺ダニ活性が認められ、接触試験ではDHEMHが比較した試料の中で最も強い活性を示しました。
密閉・開放といった実験条件でも作用は変わりました。家庭で香らせるだけで同程度にダニを防除できると示したものではありません。
出典:Wu HQ, et al. (2012) Acaricidal activity of DHEMH, derived from patchouli oil, against house dust mite, Dermatophagoides farinae. Chem Pharm Bull 60(2):178-182.
確認範囲:抄録確認。
ブラックペッパー|香り刺激と嚥下の反応
研究の対象:ヒト
脳卒中後の高齢者105名が参加し、ブラックペッパー、ラベンダー、蒸留水による香り刺激を比較した1カ月間の研究です。ブラックペッパーの刺激では、嚥下反射が始まるまでの時間の短縮や、嚥下運動の増加が報告されました。
105名は研究全体の人数です。飲み込む機能に関する指標を評価したもので、肺炎の発症が減ったと結論づける結果ではありません。
出典:Ebihara T, et al. (2006) A randomized trial of olfactory stimulation using black pepper oil in older people with swallowing dysfunction. J Am Geriatr Soc 54(9):1401-1406.
確認範囲:抄録確認。
フランキンセンス|ボスウェリア属の精油と微生物
研究の対象:微生物・成分分析
ボスウェリア属4種の樹脂から得られる精油について、成分と細菌・真菌への作用を調べた研究です。フランキンセンスに関わる抗菌・抗真菌活性が報告されましたが、活性の強さは植物種と試験した微生物によって異なりました。
B. carteriとB. papyriferaでは真菌への活性が、B. rivaeではカンジダへの活性が認められました。精油の植物種と、どの微生物を調べた結果なのかを結びつけて理解しましょう。
出典:Camarda L, et al. (2007) Chemical composition and antimicrobial activity of some oleogum resin essential oils from Boswellia spp. (Burseraceae). Ann Chim 97(9):837-844.
確認範囲:抄録確認。
ベチバー|培養細胞の炎症反応
研究の対象:培養細胞
炎症を起こす刺激を与えたマクロファージの培養細胞に、ベチバー精油を作用させた研究です。一酸化窒素の産生などの炎症反応が抑えられ、炎症に関わる酵素やサイトカインの調節との関連が示されました。
培養した細胞で反応を調べる基礎研究です。ヒトで痛みや炎症が改善するかを確かめた試験ではありません。
出典:Chou ST, et al. (2012) Study of the chemical composition, antioxidant activity and anti-inflammatory activity of essential oil from Vetiveria zizanioides. Food Chem 134(1):262-268.
確認範囲:抄録確認。
ペパーミント|暗い部屋での眠気の変化
研究の対象:ヒト
大学生が参加した実験で、暗い部屋に11分間いる間の眠気を、瞳孔の揺らぎから評価しました。ペパーミント精油の香りがある条件では、香りのない条件より、眠気の指標の増加が抑えられました。
短時間の実験室内の評価です。睡眠不足を解消したことや、長時間の作業中も眠気を防げることを示す結果ではありません。
出典:Norrish MIK, Dwyer KL (2005) Preliminary investigation of the effect of peppermint oil on an objective measure of daytime sleepiness. Int J Psychophysiol 55(3):291-298.
確認範囲:抄録・公開プレビュー確認。
この精油が比較対象などに含まれる研究:小学生の計算ミスと気分
ベルガモット|芳香浴と気分の変化
研究の対象:ヒト
健康な女性42名を対象に、ベルガモット精油の芳香浴と香りのない条件を比較した報告です。香りのある条件では、混乱や精神的な疲れが軽くなり、活気が増すなど、気分の評価に変化が見られたとされています。
紹介は検定資料の研究概要に基づきます。引用文献の書誌は確認できましたが、原論文本文は未確認のため、個々の尺度の有意差や実施条件の詳細は追加していません。
出典:渡邉映理, 他 (2013). ベルガモット精油による芳香浴の自律神経系および情動に及ぼす効果. Aroma Research. 14(2):150–154.
確認範囲:書誌確認・紹介は検定資料に基づく。
この精油が比較対象などに含まれる研究:香りを身にまとった生活と顔写真の印象
ベンゾイン(レジノイド)|シャム安息香とスマトラ安息香の成分
研究の対象:成分分析
植物の由来が異なるシャム安息香とスマトラ安息香を分析し、成分の共通点と違いを調べた研究です。バニリンなどの共通成分がある一方、安息香酸やケイヒ酸、そのエステル類の組成が、由来を区別する手がかりになります。
樹脂の組成を調べる研究で、効能を評価する臨床試験ではありません。樹脂全体・抽出物・揮発性画分では成分の比率が異なるため、どの試料で何が多いかを分けて読む必要があります。
出典:Burger P, et al. (2016) New insights in the chemical composition of benzoin balsams. Food Chem 210:613-622.
確認範囲:抄録・公開プレビュー確認。
ミルラ|皮脂中のスクワレンの酸化
研究の対象:採取した皮脂・試験管
ミルラ精油を配合した化粧品を使用した後の皮脂を採取し、紫外線を照射してスクワレンの酸化を調べた研究です。比較した抗酸化成分の中で、ミルラ精油がスクワレンの過酸化を抑える作用を示しました。
皮脂は人体から採取していますが、紫外線を照射したのは採取後の試料です。肌の日焼けを防ぐ性能や、日焼け止めとしての効果を測った試験とは異なります。
出典:Auffray B. (2007). Protection against singlet oxygen, the main actor of sebum squalene peroxidation during sun exposure, using Commiphora myrrha essential oil. Int J Cosmet Sci. 29(1):23–29.
確認範囲:抄録確認。
メリッサ|ヘルペスウイルスの感染性
研究の対象:ウイルス・培養細胞
培養細胞を使い、メリッサ精油が単純ヘルペスウイルス1型・2型の感染性に与える影響を調べました。感染によってできるプラークを半分に抑える濃度は、1型で0.0004%、2型で0.00008%でした。
ウイルスが細胞に感染する前の処理で抑制が見られ、細胞内に侵入した後の処理では同じ作用は認められませんでした。これらの濃度は実験系の値で、ヒトに使う濃度を示していません。
出典:Schnitzler P, et al. (2008) Melissa officinalis oil affects infectivity of enveloped herpesviruses. Phytomedicine 15(9):734-740
確認範囲:抄録確認。
ユーカリ|呼吸器に関わる細菌・ウイルスへの作用
研究の対象:微生物・培養細胞
ユーカリ精油を、臨床検体から得た8種類の細菌と2種類のウイルスに作用させた研究です。一部の細菌は精油に対する感受性が高く、ウイルスではムンプスウイルスに弱い活性が見られました。
すべての細菌・ウイルスへ一様に作用したわけではありません。患者への吸入や、室内空気の感染予防効果を評価した試験とは分けて考えましょう。
出典:Cermelli C, et al. (2008) effect of Eucalyptus essential oil on respiratory bacteria and viruses. Curr Microbiol 56(1):89-92.
確認範囲:抄録確認。
ラベンダー|月経前の気分と自律神経の指標
研究の対象:ヒト
月経前に軽度から中等度の自覚症状がある20代女性17名が、ラベンダーと水の条件を別の機会に経験した研究です。10分間の香りの吸入後、副交感神経活動を反映する心拍変動の指標が増し、気分評価の落ち込みや混乱が軽減しました。
参加者は重いPMSやPMDDの患者ではありません。月経前の自覚症状に対する短時間の反応として読むことが大切です。
出典:Matsumoto T, et al. (2013) Does lavender aromatherapy alleviate premenstrual emotional symptoms?: a randomized crossover trial. Biopsychosoc Med7:12.
確認範囲:本文の方法・結果確認。
レモン|抑うつ感や緊張・不安の変化
研究の対象:ヒト
抑うつに関わる不調を抱える8名にレモン精油の香りを用い、自己評価式の抑うつ尺度などで変化を調べた報告です。吸入後の短い時間に、抑うつ感や緊張・不安が軽くなる変化が報告されています。
対象は出典で「うつ未病期」と表現されています。紹介は検定資料に基づき、原論文の本文や対照条件は未確認です。うつ病の治療効果を示すものとしては扱いません。
出典:今野紀子(2009)香りによるうつ未病期のメンタルケア効果-レモン,ユズ精油の作用-.Aroma Research10(3):260-263.
確認範囲:書誌確認・紹介は検定資料に基づく。
レモングラス|黄色ブドウ球菌のバイオフィルム
研究の対象:微生物
黄色ブドウ球菌5株に複数の精油を作用させ、増殖とバイオフィルムへの影響を比較した研究です。レモングラスは、調べた精油の中で強い抗菌・抗バイオフィルム活性を示しました。バイオフィルムは、微生物が集まってつくる膜状の構造です。
使用した植物はCymbopogon flexuosusです。プロフィールで扱うCymbopogon citratusとは植物種が異なるため、同名の精油すべてにそのまま結果を当てはめないようにします。比較されたグレープフルーツには、この試験で抗バイオフィルム活性は認められませんでした。
出典:Adukwu E.C. et al. (2012) The anti-biofilm activity of lemongrass (Cymbopogon flexuosus) and grapefruit (Citrus paradisi) essential oils against five strains of Staphylococcus aureus. J Appl Microbiol 113(5):1217-1227.
確認範囲:抄録確認。
ローズ(アブソリュート)|学習時と睡眠中の香りによる記憶の手がかり
研究の対象:ヒト・香り成分
学習時に与えた香りを徐波睡眠中に再び提示すると、学習した内容の保持がよくなるかを調べた研究です。ローズにも含まれるフェニルエチルアルコールによる香り刺激を用い、徐波睡眠中の再提示で、場所などの情報を覚える記憶の保持が高まりました。
ローズ精油そのものを試した結果ではありません。学習時に香りを与えなかった場合や、レム睡眠中・覚醒中の再提示では同じ効果が見られず、香りを与えるタイミングが重要な条件でした。
出典:Rasch B, et al. (2007) Odor cues during slow-wave sleep prompt declarative memory consolidation. Science 315(5817):1426-1429
確認範囲:抄録確認・刺激成分は検定資料で確認。
ローズオットー|香りを身にまとった生活と顔写真の印象
研究の対象:ヒト
女子大学生28名を、ローズオットー、ベルガモット、精製水の3群に分け、約5週間、香りなどを付けたシールを襟元に着けて生活してもらいました。別の評価者が前後の顔写真を比較すると、ローズオットー群では実施後の写真をより魅力的と評価する割合が高くなりました。
評価したのは顔写真から受ける印象です。「肌の構造が改善した」「誰でも魅力が増す」という結果に広げず、実験で用いた評価として理解しましょう。
出典:熊谷千津,他(2018)精油の香りを纏うライフスタイルが女子大学生の魅力に与える影響.アロマテラピー学雑誌19(2):10-21
確認範囲:研究実施団体掲載の原論文抄録確認。
ローズマリー|血中1,8-シネオール濃度と課題成績
研究の対象:ヒト・相関研究
健康な成人20名が、ローズマリー精油を香らせた部屋で計算や視覚課題を行った研究です。血中の1,8-シネオール濃度が高い人ほど、一部の課題で反応が速く、正答数も多いという関連が認められました。
香りのある群と無臭群の優劣を比較した試験ではなく、血中濃度と成績の相関を調べています。すべての課題で関連があったわけではなく、これだけで濃度上昇が成績向上の原因だとは断定できません。
出典:Moss M, Oliver L (2012) Plasma 1,8-cineole correlates with cognitive performance following exposure to rosemary essential oil aroma. Ther Adv Psychopharmacol 2(3):103-113.
確認範囲:本文の方法・結果確認。
ローマンカモミール|培養細胞のコラーゲン産生
研究の対象:培養細胞
ヒトの皮膚に由来する線維芽細胞にローマンカモミール精油を加え、コラーゲンの産生を調べた研究です。精油を加えない条件よりコラーゲン量が増え、試験した範囲では添加量に伴う増加が報告されました。
ここで紹介するのは細胞実験の部分です。同じ論文には肌への使用試験もありますが、細胞での産生量の増加を、そのままヒトの肌でコラーゲンが増えた結果として扱うことはできません。
出典:熊谷千津,他(2014)カモミール・ローマンのコラーゲン合成促進作用.アロマテラピー学雑誌14(1):27-36.
確認範囲:抄録・研究実施団体の解説確認。
インストラクター対象4種の研究例
以下は、インストラクター公式テキスト掲載研究の補足です。
シトロネラ|精油のフリーラジカル消去活性
研究の対象:試験管・成分分析
ネパール西部のジャワシトロネラから得た精油について、成分分析と抗酸化活性の測定を行った研究です。DPPHというフリーラジカルを使った試験で、精油にラジカルを消去する活性が認められました。
精油を試験管内で評価した結果です。芳香浴によってヒトの老化や紫外線による影響が抑えられるかを調べた実験ではありません。
出典:Shrestha D, et al. (2022). Chemical Characterization, Antioxidant and Antibacterial Activity of Essential Oil of Cymbopogon winterianus Jowitt (Citronella) from Western Nepal. Current Biotechnology. 11(1):86–91.
確認範囲:原誌の抄録確認。
パルマローザ|枯草菌に対する抗菌作用
研究の対象:培養した細菌
パンの品質劣化にも関わる枯草菌に対して、24種の精油の抗菌作用を比較した研究です。寒天培地を使った拡散法などで評価し、パルマローザ精油に強い抗菌活性が認められました。
食品製造分野での活用を検討する基礎実験です。家庭での食品保存法や、芳香浴による空間の除菌効果を示すものではありません。
出典:Santamarta S, Aldavero AC, Rojo MA. (2021). Essential oil of Cymbopogon martini, source of geraniol, as a potential antibacterial agent against Bacillus subtilis, a pathogen of the bakery industry. F1000Research. 10:1027.
確認範囲:公開第1版の抄録・方法確認(教材引用の第2版との変更点は未照合)。
メイチャン|香りの吸入と気分・唾液中コルチゾール
研究の対象:ヒト
健康な成人15人で、メイチャン精油と蒸留水を使った吸入条件における気分や唾液中コルチゾールを調べた研究です。精油の条件では吸入後のコルチゾール値が低下し、混乱などの気分指標にも改善が見られました。
蒸留水の条件でもコルチゾール値は基準時より低下しています。全員が蒸留水、精油の順に体験しており、吸入前後の変化や条件間の違いに、時間経過や順序が影響した可能性も考える必要があります。少人数での短時間の反応であり、ストレスに対する治療効果が確立したという意味ではありません。
出典:Chaiyasut C, et al. (2020). Effects of Litsea cubeba (Lour.) Persoon Essential Oil Aromatherapy on Mood States and Salivary Cortisol Levels in Healthy Volunteers. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. 2020:4389239.
確認範囲:著者所属機関掲載の本文・結果表確認。
ユズ|月経前の気分と自律神経活動
研究の対象:ヒト
月経前の不快症状を自覚する20代の女性17人が、黄体期の別々の機会にユズとラベンダーの香りを吸入した研究です。ユズを10分間吸入した後、心拍数の低下、副交感神経活動を反映する指標の上昇、緊張・不安や疲労などの気分指標の低下が観察されました。
比較相手は無臭条件ではなくラベンダーです。ユズによる変化はラベンダーと有意に異ならず、ユズのほうが優れていることや、月経前症候群への治療効果を証明した結果ではありません。
出典:Matsumoto T, Kimura T, Hayashi T. (2017). Does Japanese Citrus Fruit Yuzu (Citrus junos Sieb. ex Tanaka) Fragrance Have Lavender-Like Therapeutic Effects That Alleviate Premenstrual Emotional Symptoms? A Single-Blind Randomized Crossover Study. Journal of Alternative and Complementary Medicine. 23(6):461–470.
確認範囲:原誌の抄録確認。